白い果実
夏に帰省したときに福岡の紀伊之國屋で購入してた本。
観相学に支配された理想形態市(ウエルビルトシティー)が舞台の物語。
次第に蒼くスパイア鉱石化していく老人と盗まれた白い果実。
そして白い果実のかけらを口にして甦るミイラの「旅人」。
独得の世界観になじむまでにページが進んでしまって序盤はあまり印象に残っていない。
しかし観相学の世界になじんでしまえば、目まぐるしく変わる観相官の運命と、
かたや静かに進む旅人とアーラの時間がからみ合っていく様に引き込まれて
最後まで飽きることなく読むことができた。
硫黄鉱山で朽ち果てた人間が小さな塩の山に変わってゆく姿さえも詩的で美しく
思えるのは山尾悠子さんの翻訳だと予め判って読んでいるからだろうか?
白い果実
ジェフリー・フォード/訳 山尾悠子
国書刊行会 ISBN4-336-04637-9