ラスト・イニング
成長したのは巧よりキャッチャーの永倉のほう
書き下ろし3つを含む5つのショート・ストーリーで綴られる「バッテリー」その後。門脇の第1打席を向かえたところで終わる「バッテリー」。気になる巧と門脇の勝負はあっさりとホームラン。しかし数ヵ月前と違い成長した巧と永倉のバッテリーは後の打席を完璧に抑え、試合も3-1で勝利する。一見、引き分けにも見える二人の勝負の行方はスコアとは関係無く試合後の表情からはっきりしている。巧の完勝だ。
一番以外だったのは門脇のその後。既に決まっていた県外の野球名門高の推薦入学を一方的に破棄し地元の高校へ進学する。巧との対戦の機会を一度でも多くするための行動だが自分勝手な行動とされ本人だけでなく家族も嫌がらせを受け苦しんでいる。実際もの凄く身勝手な行動で周りに迷惑をかけているハズ。今後はその学校への野球推薦の枠もなくなるだろうし。でも成長過程にある少年の純粋な情熱(この場合は業か?)も尊重してあげたい。つまらないオトナにはいつでもなれるんだしね。あとは「バッテリー」一のシニカルキャラの瑞垣。5作のうちの4作が瑞垣の視点で語られているが本人はあの試合を最後に野球を辞めている。進学校に進んだものの燻った毎日で妹の香夏からも「最近かっこわるい」と言われる始末。そんな時に横手中の監督から「コーチとなって巧と永倉のいる新田を倒さないか?」と誘われ最初は断るが次第に興味を示していて面白い。それに海音寺と香夏のこともあるし「エキストラ・イニング(延長戦)」で続きを書かないなあ。