パヴァーヌ
ベラスケスの描いたマルガリータ王女
SFの最高峰と呼ばれながら、サンリオSF文庫の終焉と共に出版から数
カ月で姿を消した幻の名作。以前から読みたいとは思っていたけど、
サンリオ版は絶対数が少ない上に、見つけても高価で手が出ずにいた
ところに再版された扶桑社版を発見、即購入。
この作品は読み始めにSFの香りはしない。一見すると年齢、性別、職
業、時間の異なったそれぞれの人の運命があることをトリガに違った
方向へ流れてゆく様を描いた小品の集まりにすら感じる。この作品が
名作と呼ばれる所以は、それぞれの物語が実にうまく時間を越えて絡
みあって一つにまとまっているところにつきると思う。まるで最初の
ステップから最後のステップまでが予定調和で進むパヴァーヌのよう
に…
パヴァーヌといえば、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が
真っ先に思い浮かぶけど、この作品のBGMはドビュッシーの「2つの
アラベスク」のほうがぴったりな気がする。
*亡き王女のためのパヴァーヌのモデル=若くして亡くなったスペイ
ンの王女マルガリータは後付け説が有力。
パヴァーヌ/キース・ロバーツ
扶桑社 ISBN:4594029434 (326P)