一夢庵風流記
ひょっとこ斎
天下御免の傾奇者の前田慶次郎利益こと前田慶次の生き様を描いた時代小説。戦場では朱塗りの槍の使い手でありながら、和歌や俳句、踊りに堪能と風流の人だった前田慶次。物語の最初から最後までとにかく自由な人。一見すると死を恐れない自分の命を秤にかけたような危うい生き方だけど刹那的とは違う信念を持った傾奇っぷりで読んでいくうちに憧れすら感じてくる。信念で生きる一匹狼がゆえか負け戦と判っていながら不利なほうにばかり味方していたりする。徳川天下取りの戦でも親交のあった結城秀康(家康の次男)に「直江山城(兼続)は莫逆の友、死んでやらねばなりますまい」。と語り上杉側として戦場へ向かう。自分の、相手の哀しみを理解しつつも運命として受け入れる前田慶次の自然体な人柄がよく表れていると思う。晩年は直江兼続の領地の米沢で風流に過ごし、現在でも「慶次清水」などに慶次の名前が残っているそうだ。